妊娠期のホルモン分泌は非妊娠期から大きく変化しており、睡眠もその影響を受けます。妊娠初期には催眠作用もあるプロゲステロンや炎症性サイトカインによる睡眠誘発作用の関与があり、日中の眠気が増大し夜間睡眠が長くなる傾向があります。
また、妊娠前と比べ、中途覚醒が増え、睡眠の質が低下することが報告されています。妊娠中期には、日中の眠気は改善しますが、妊娠後期には身体的変化に関連した不眠が増加し、再び日中に眠気を感じるようです。
妊娠・出産に伴う睡眠パターンや夜間の特徴と日中の症状の変化がまとめられた表です。↑は増加、↓は低下や減少を示しています。ただし、妊産婦さんの全員がこのようなパターンや特徴を示すわけではありません。
これまでの研究から、このような傾向がみられるということです。ご参考になさってください。
| 妊娠初期 | 妊娠中期 | 妊娠後期 | 出産後 | |
| 睡眠 パターン | 総睡眠時間↑ 昼寝の回数↑ 中途覚醒↑ 睡眠効率↓ 徐波(深)睡眠↓ | 総睡眠時間↓ 睡眠効率↑ 徐波(深)睡眠↓ 中途覚醒↓ | 総睡眠時間↑ 昼寝の回数↑ 中途覚醒↑ 睡眠段階N1↑ 睡眠効率↓ 徐波(深)睡眠↓ レム睡眠↓ | 総睡眠時間↓ 睡眠効率↓ ノンレム睡眠↓ レム睡眠↓ |
| 夜間の特徴 | 頻尿 身体的不快感 (胸の張り、背部痛) | <終わり頃> いびき むずむず脚症候群 不規則な子宮収縮 胸やけ 夢 背中・首・関節痛 | 頻尿 身体的不快感 胸やけ 不規則な子宮収縮 胎動 筋肉や脚の痙攣 低呼吸 夢・悪夢 いびき むずむず脚症候群 | 不安感 子宮収縮 |
| 日中の症状 | 疲労感 眠気 吐き気 気分の変化 | 鼻づまり | 疲労感 眠気 注意力の低下 鼻づまり | 疲労感 不安感痛み |
出典) Balserak BI, et al. Sleep and Sleep Disorders Associated with Pregnancy. In: Principles and Practice of Sleep Medicine, 7th ed. 2022; 1751-1763. 翻訳・一部改変
表中の「むずむず脚症候群(restless legs syndrome)」は、その名の通り、脚の深部がムズムズする感覚が生じる睡眠障害です。
うとうとと眠りかけた時に発生し、スムーズな入眠を妨げます。
2003年に報告された調査では、日本人妊婦における有病率は19.9%でした。
近年、諸外国では妊娠期の睡眠呼吸障害も注目されています。
妊娠期は体重増加や浮腫、ホルモン分泌の変動などにより、睡眠呼吸障害を発症しやすくなります。米国のデータでは、睡眠呼吸障害の有病率は妊娠初期で9%、妊娠後期で12%と報告されています。